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この世界の片隅にネタバレなしの感想 自分より大切な存在を包み込みたくなる

この記事を書いた人:
水元英登(みずもと ひでと)
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継続課金型コミュニティ設計・管理

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11月12日(土)全国公開 劇場用長編アニメ「この世界の片隅に」公式サイトより

【更新・2017.01.16】映画「この世界の片隅に」を見てきました。

まず結論から言うと、見に行ってすっごく良かったです。

この映画の決め手は、何と言っても「すずさん」という普通の女性(女の子と表現すべきか)のキャラクターです。戦時という普通じゃない世界にありながら、本当の普通の感情の動きと普通の行動をとる女の子をプロの描き方で見ているという作品です。

 

かわいい手に象徴された私の弱点を突かれた 

私には年のうんと離れた大切な人がいます。私の目には、どれだけ時が経っても彼女は女の子として映ります。そう、ちょうどすずさんに見えます。私は彼女の “手” が大好きです。

 

やわらかい手です。あたたかい手です。

 

映画「この世界の片隅に」を、もしも何度も見に行くようなことがあれば、そのうちの一回は是非、すずさんの手がどのように描かれて、どのように変化していくかだけに注目して欲しいです。

 

何を触り、誰に触られ、硬いのか柔らかいのか、冷たいのか熱いのか、それは大切に扱われているか、どういう感情の媒介となっているか、見て、感じて欲しいです。

 

深く語り出すと時間がいくらあっても足りないのでポイントを3つに絞りました

作品の尺(時間的長さ)の関係で、すずというキャラクターの背景を原作ほど深くまで描けなかったという話は耳に入ってきますが、一般のお客さんの私が「映画『この世界の片隅に』」を見て、感じるわけですから、そんなマニアックは裏事情はシャットアウトしますよ!

 

ネタバレをしないように頑張りますので、まだ見ていない人も安心して読んでくださいね。いや、むしろ読んで欲しい。

鑑賞後は複雑な感情で心がざわつくので、伝えるのがとても難しいと考えて3つのキーワードを用意しました。

 

「この世界の片隅に」は大変高い評価を得ています 

ちなみに評判はすごく良いです。

 

 

 

 <もくじ>

 

この世界の片隅に 感想の3つのキーワード

まず大前提として、あらすじを共有します。これはネタバレではないですね。

 

f:id:mizumotohideto:20161123014149j:plain映画館のロビーでの展示

すずは、広島市江波で生まれた絵が得意な少女。見知らぬ若者の妻になるために、20キロ離れた町・呉に嫁ぐ。ときに昭和19(1944)年。18歳で一家の主婦となったすずは、あらゆるものが欠乏していく中で、日々の食卓を作り出すために工夫を凝らす。だが、戦争は進み、日本海軍の根拠地だった呉は、何度もの空襲に襲われる。庭先から毎日眺めていた軍艦たちが炎を上げ、市街が灰燼に帰してゆく。すずが大事に思っていた身近なものが奪われてゆく。それでもなお、毎日を築くすずの営みは終わらない。

引用:片渕須直監督による『この世界の片隅に』(原作:こうの史代)のアニメ映画化を応援 | クラウドファンディング - Makuake(マクアケ)

 

上映後、黙々と会場を出る観客たち。

あまりに圧倒され、言葉にならないのです。

感情の置き場所が、用意していたどのカテゴリーの引き出しにも収まりがつかないのです。

 

こんな映画、他にはありません。

 

収まりがつかない感情の混乱からひねり出した3つのキーワード

私も頭の中をうまくまとめることができませんでした。

そんな中でも思い浮かんだキーワードは3つです。

「生きろ。」、「やわい手 ぬくい手」、「時」の3つ。

 

本編上映後、エンドロールから劇場を立ち去るまでの間に頭に浮かんだ、一番ホットなキーワードです。

ホットなうちに、それぞれどういうことかを書いていきますね。

 

この世界の片隅に 感想キーワード1 生きろ。

言わずと知れた、1997年、空前の大ヒットとなった宮崎駿監督の映画「もののけ姫」のキャッチコピーが「生きろ。」でした。

この「この世界の片隅に」の中での時間は、まだ終わらないのです。

 

どんなことがあっても明日また生活しなくてはならない 

主人公・すずさんやその家族、この物語の登場人物たちの世界は作り手のこだわりで実在するかのように作り込まれています。

今はもうない広島の街(原爆投下以前のため)、呉(くれ)の高台から遠くに見える海と軍艦を想像して欲しいと思います。そして、楽しみにしておいて欲しいです。

 

戦時の物語ですから、当然途中から姿を見せない登場人物もいるのですが、生き残ったそれぞれの人たちはこの先も(実在するとしか思えないその世界で)生活をしていくのです。

普通ならドラマのエンディングくらいのインパクトがある出来事でも、実際の人生はそこでは終わらせてくれないんです。明日はまた朝ごはんを作って食べないといけないんです。

 

どんなにこの世に失望しても「生きろ。」!

 

この世界の片隅に 感想キーワード2 やわい手 ぬくい手

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劇中で「すずはやわいの〜。すずはぬくいの〜。」と言うセリフがあります。

すずさんの体は柔らかくて、温かいのです。

主人公のすずさんは19〜20歳の女の子ですから、そりゃそうでしょ!

 

すずさんは絵を描くことが得意な女の子です。

ですから、手の描写がたくさん出てきます。そして、この手がストーリー上とっても大事なキーとなります。

あなたは自分の右手よりも大事な手がありますか?

 

私にはあります

その愛しさとか、柔らかさとか、温かさとかを胸にズドンと突きつけられて呼吸ができなくなります。

これまで築き上げてきた思い出をいろいろ頭に浮かべました。

 

この映画は泣かせてくれない

失いたくない!

 

もしこの映画で泣くことがあるとしたら、時間をある程度開けた後、様々な現実を思い出し未来を恐れ不安になってしまってという感情です。

この映画は泣かせてくれません。そんな単純なオチに連れて行きたいわけじゃないのです。

 

本当にその場では、圧倒されて息もできない・・・だけです。

 

この世界の片隅に 感想キーワード3 時

残念ながら、自分の右手よりも大事な手とは、母のものではありません。

これは母には読まれたくないけれども・・・

 

残念ながら、時は一方通行にしか流れないのです。

年長者はどんな時も、後に続く者の肥やしになるしかないのです。

 

と、同時にどんな人であっても、過去には若くあり、子供だったということを思い出して欲しいと思います。

この映画を見ることで、普段の人間関係が変わります。隣人は誰しもかわいい存在なのです。私たちはだいたい同じようなシナリオを描いて生きていきます。

 

それが普通ってことじゃないですか?

私たちはだいたい同じことを見て、同じことを思って、同じことを行動するものです。誰もが自分と同じなんです。誰もが自分なんです。

 

普通の人は、そんなドラマチックに怒ったり、行動を起こしたりしません。普通の描き方が本当にリアルだから、身の回りに実在している人たちに見えてきました。

 

そして、時は逆に流れることはありません。

自分で決めてきた人生でも、ただ押し流されてしまった人生でも、選択しなかったもう一方の道の先を知ることは絶対にできません。

大事なものを失った時、もっとああしていれば良かった。こう言ってあげれば良かったと必ず後悔するものです。失う前から失っているのに。

 

どんな人だって儚い(はかない)  残酷だけど美しい現実を突きつける

この映画では、何年も生きて、時間を費やして、やっと気がつく「時」に関する重いものを容赦なく胸に突きつけてきます。

でもそれは、早いか遅いかの違いでしかありません。いずれ突きつけられる真理です。早く知れただけ良かったのかも知れません。

この映画に出会わなければ、そのことに気づくのはいつ起こっても不思議ではない関東大震災に被災した時だったか、ゴジラが目の前に現れた時だったか。

 

父を失った時に、すべてを投げ出したくなった経験がある私ですら、この有様です。

 

この世界の片隅に 感想まとめ

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この映画に触れることができて、大好きなやわい手(=ぬくい手)をもっと大事にしたいと思いました。

きっと、大事な人にもっと素直になれるきっかけをもらえました。

みなさんの中で、まだ見てない人がいたとしたらすぐに劇場に見に行くことをご検討いただきたいです。何より「今すぐ」というのが大事です。今から世界が愛おしくなりますから。

 

今、私たちは生きているのですから。

 

おわり

 

 

P.S. この映画は以前にクラウドファンディングをやっていたのを思い出しました。今日たまたまFacebookの友達がリンクをシェアしていて思い出し、「行ってみるかな」となっただけだったのに、とんでもないことになりました。

 

20:55からの立川で見ました。そして今、どうしても書きたくて書いてます。(アップは23日の午前中にしたいと思います)

 

劇場から出る時に、私にとって「大切な手」の持ち主からメッセージが入っていることに気づきます。

「○○(愛犬の名前)が癌になりました

 足を切断する事になりそう

 かわいそすぎる...」

 

このタイミングで!

私は「え」としか返せませんでした。

 

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もっと会いに行けた。もっと遊んであげられた。もっと思い出を作れた。

いろんな思いがこみ上げてきて、帰り道の階段でズッコケて前の人に乗りかかってしまいました。

 

私の実家にも愛犬がいて、彼はおもちゃを飲み込んで以前死にかけました。

今は元気に生きています。本当に良かった。

○○(愛犬の名前)も、なんとかいい方向になって欲しい。

 

どうか、みなさんの応援の念力をお送りください。

実家の愛犬は同じ方法で助かりました。

 

そして、これまでにやってくるべきだったことを時を惜しんで取り戻したい。そんな風に思います。

こんな気持ちになれたのも「この世界の片隅に」のおかげです。

上映している劇場が少ないので、公式Webサイトで急いでチェックしてくださいね。

 

 

 

konosekai.jp

 

今しか見れないものを心に残しませんか?

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がんばって踏ん張った実家の犬(当時)。今は元気です。ご安心を!

 

 

最後まで読んでくれてありがとうございます。

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参考に。海外の人から見た映画『この世界の片隅に』レビュー。

www.uniuni.tokyo