種類で味をイメージできる美味しい日本酒の見つけ方の3つのポイント
水元英登(みずもと ひでと)
継続課金型コミュニティ設計・管理
日本酒初心者の私にとって、銘柄なんてぜんぜんわかりません。それでもお店に並んでいる日本酒の中で選ばなきゃいけない場面に出くわします。いかにハズレを引かないかの方法がわからなくてイライラするのはもううんざりなので、二度と失敗しない日本酒の選び方を3つのポイントでみなさんと共有したいと思います。
<もくじ>
日本酒の甘口辛口を見分ける方法
日本酒の選ぶ時の一番わかりやすい目安として、「甘口」「辛口」といった表示がありますよね。
日本酒のビンに貼られたラベルに直接的に「甘口」「辛口」などと書かれているものもあります。またはお店の人が店頭ポップで書いてくれていることもあります。
下のお酒はラベルに明確に「すっきり辛口に仕上がっています」と書いてありますからわかりやすいですね。
でも、ぜんぜん何にも書いてないじゃんかーっ!って時もあります。
日本酒に詳しい人たちの間には「甘口辛口なんて主観じゃないか」という意見も多いからです。
でも、安心してください。
そんな時は、この甘口辛口を線引きする根拠を知っていれば、それだけで自分で甘口辛口を判断できるようになります。これだけでも、ちょっと他人に教えてあげたくなっちゃいますよ。
それではいきましょう。
日本酒の甘さとはどこから来るのか
甘口と呼ばれる日本酒が、どうして甘口と呼べるんだい?という疑問が湧いてきます。
これを知るには、先に日本酒の「甘さ」とは何なのかを知ると順番としてすんなり頭に入ってきます。
そもそも、何でお米からできている日本酒が甘かったり、そうでなかったりするんだい?
日本酒はお米からできているので、ご飯を噛むと甘くなるのと同じようなことが起こっています。
微生物の働きで、お米のでんぷんが糖に変わることによって甘さが出ます。
日本酒は重ければ甘口で軽ければ辛口だ
日本酒の見た目だけでは、その日本酒に糖が多いかどうか...つまり甘いかどうかはわかりません。
日本酒に含まれる糖の濃度を見極めるために、重さを見ることになっています。
これは、糖の質量が水よりも大きいことを利用した計測方法です。
つまり、水を基準の0として、それよりも比重が重いものは糖が多いので「甘口」、軽いものは糖が少ないので「辛口」と呼びます。
日本酒の甘口辛口の目安を数値化してみました
この比重を数値化したものが「日本酒度」で、甘口辛口を見分ける目安となる数字です。
重くて水に沈むとマイナスで表現されます。なので、日本酒度がマイナスであれば甘口と表現されます。
下の日本酒は、日本酒度のマイナスの値が大きいかなりの甘口です。
ちなみに日本酒度がプラスになる辛口は、水に浮くということになるはずですが、それはアルコールの比重が水よりも軽いからです。
あまり複雑に考える必要はないので、ここでは糖が多くて重ければ甘口とわかりやすく単純化しましょう。
日本酒の味を決めるもう1つの視点
ちょっと待って!日本酒度の他に酸度って数値があるけど
これ何なのよっ!
よく聞いてくれました。
日本酒の味を表現 濃醇と淡麗がわかる
日本酒の味を表現する時に、「濃醇」と「淡麗」というものがあります。
酸度を知るとこれがわかります。
「甘口」と「辛口」をすでに学習した私たちですから、これがわかると以下の4つの味を日本酒の購入前にイメージすることができるようになります。
・淡麗辛口
・淡麗甘口
・濃醇甘口
・濃醇辛口
日本酒の味のピント調節機能
酸度の「酸」とは、日本酒の製造過程で発生する乳酸・コハク酸・クエン酸・リンゴ酸等の酸の量を表したものです。
これもわざわざ複雑に難しくする必要はないので、酸の働きで何が起こるのかだけ覚えておいてください。
酸の働きがわかるには、カメラのピント調節機能をイメージしてください。
酸には味を引き締める働きがあります。
酸が多いとキレやメリハリがあり、舌への刺激が強くなります。
これが酸度が高い、「濃醇」「濃厚」と表現される日本酒です。
逆に、酸が少ないと味がぼやけます。
これが酸度が低い、「まろやか」と表現される日本酒です。
はっきり、くっきりがお好きですか?(酸度が高い)
ぼんやり、ふんわりがお好きですか?(酸度が低い)
日本酒度と酸度がわかっただけでも、かなり日本酒について語れるようになりました。
だがしかし!!
残念なお知らせ...
日本酒度と酸度は、ラベルに表示されていないことも多い!
え!?
そんな時はどうすればいいの?
日本酒の造り方を知ることで味を予想する時のポイント
純米大吟醸とは何なのかがわかると日本酒の基本はわかるようになる
まずは基本からです。
よく聞いたり見たりするのが「純米大吟醸」という表現です。
純米酒とはつまり、お米だけで造られた日本酒のことです。
純米酒であれば、明確に「純米」の文字がラベルのどこかに書いてあることがほとんどです。
商品ラベルの原材料名に「米・米麹(こめこうじ)」と書いてあります。
「純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」は全部、お米だけで造られています。
ちなみに、純米酒ではない日本酒は醸造アルコールが加えられています。
「本醸造」「吟醸酒」「大吟醸」などがこれに該当します。
吟醸酒を名乗れる条件は、どれくらいお米を削っているのかで決まります。
お米を削ることによって雑味を取り除きます。
お米をどれだけ削ったのかは「精米歩合」というパーセントで表現します。
精米歩合が高い日本酒はお米の複雑な味を残し、精米歩合が低い日本酒は磨けば磨くほどクリアな味になるということです。
精米歩合60%以下で吟醸酒を名乗ることができます。
玄米を100%として食用の白米が90%なのですが、吟醸酒とはお米の40%は削っています。
なので、雑味が少なく、その分高価になります。
大吟醸とは、さらにお米を削り精米歩合50%以下のものです。
なので、純米大吟醸とは、「純米酒」かつ「大吟醸」という意味だったのですね。
ちなみに大吟醸も精米歩合60%以下の吟醸酒の一部なので、精米歩合50%以下でもただ吟醸を名乗っている日本酒もあります。商品ラベルの精米歩合を見てみれば、それはわかります。
下のお酒は、精米歩合が35%の大吟醸。醸造アルコールが加えられているので純米ではありません。
ちなみに醸造アルコールは主にサトウキビを原料にしたアルコールで、米から造られたものもあります。
昔は防腐の意味合いがあったそうですが、現在では香りを強調する理由で用います。
無濾過生原酒がわかると日本酒のかなり多くのことがわかるようになる
さっきからチラチラ見えていて気になるのは「無濾過生原酒(むろか・なま・げんしゅ)」という表現ではないでしょうか。
無濾過生原酒が言いたいことは3つに分かれています。
1. 無濾過
2. 生
3. 原酒
無濾過とは文字どおり、ろ過をしないことです。
生は生酒のことで、加熱殺菌処理をしていないことです。
みずみずしくフレッシュは状態なので、よく冷やしてきりりと飲むのがおすすめです。
加熱殺菌処置のことを「火入れ」と言います。
原酒とは、できた日本酒にアルコールの調整のための水を加えていない日本酒です。
アルコール度数は高くなりますが、風味は芳醇になります。
逆に、「原酒」「無加水」と明記されていない日本酒はアルコール度数の調整のため水が加えられています。
日本酒の火入れと生酒
火入れとは、日本酒をビンに詰めて出荷する製造過程での通常2回の加熱処理のことです。逆に加熱処理を加えずに生のまま出荷する日本酒は生酒と呼びます。
加熱処理する理由は、味をキープして保存期間を長くするためです。
日本酒の中の酵素がアルコール発酵を続けると味が変化していきます。
品質を変えてしまう発酵を止めるために、火入れを行います。
これにより、お酒の味は安定します。
生酒は、生酒にしかない特有のフレッシュなみずみずしい味わいがあることと引き換えに、品質が変わりやすいという弱点を持っています。
冷蔵・瓶詰・運送の技術が発達した現代だからこそ楽しめる贅沢で、よく冷やして開封後は素早く味を楽しみましょう。
栓を抜くことで空気に触れ、変化のスピードが加速します。
日本酒は生酛と山廃を探せ
実は、日本酒について一番語りたかったのはここからです。
生酛(きもと)とは、生酛造りのことで、日本酒の造り方の1つです。
私はこの生酛がすっかりお気に入りなんです。
これがまた、結構めんどくさい話で...わかりやすくするために比較対象として「速醸(そくじょう)」を使って、大きく分けて「速醸」と「生酛」の2種類があります!というところから話し始めますね。
400年飲まれ続ける日本酒 生酛造り
生酛は明治時代中盤まで主流だったお酒の造り方で、日本酒が一般人にも広まった400年前、江戸時代にも主流だったお酒の造り方です。
そうです。生酛があったから日本酒は一般人にも広まったのです。
これに対して、速醸は1910年(明治43年)に新しくできた現代の主流の造り方です。
なぜ、現在は速醸が主流なのかといえば、それはもう、楽チンだからです。
難しい話は抜きにしてシンプルに言います。
日本酒を造る上で良い環境を作るために、雑菌を排除するための「人口乳酸」を投入するのが速醸です。透明感のある酒質に適しています。
自然の中で乳酸を育てるのが生酛です。速醸に比べて味に幅が出ます。
自然界の乳酸菌を取り込むためには、乳酸菌の発生しやすい環境を作ってじっと待つことになります。
米や米麹をすりつぶし、溶かす、この作業は今でも大人数で行う重労働です。
この作業を「山卸(やまおろし)」もしくは「酛すり」と呼びます。
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生酛の味は、「複雑」「野性味」などと表現されて、コクを生み濃醇になります。
濃厚な味の料理やクリーミーな乳製品と相性がいいと言われています。
深みと旨味の日本酒 山廃
明治時代の後期になって、材料の投入順序を変えることで山卸の作業を除いても生酛の味わいを実現できることがわかりました。
これを、山卸廃止酛、略して山廃と呼びます。
山廃造りと同時に現在主流の速醸造りも考案されました。
山廃造りは、速醸造りに比べて時間がかかりますが、豊富なアミノ酸によって深い旨味とキレのある味わいを実現します。
これから日本酒を知っていきたいぜ!というみなさんには是非、生酛や山廃の日本酒に親しんでほしいと思っています。
美味しい日本酒を予想して選ぶための方法まとめ
...というわけで盛りだくさんでお届けしました日本酒の味のイメージの方法、大きく分けて3つのポイントでしたが、もう一度まとめていきます。
1. 日本酒度と酸度
日本酒初心者も含め幅広い層に受け入れられるために商品ラベルに味の目安となる数値を入れてくれている親切な日本酒に使える見つけ方です。
日本酒度という数値がマイナスのものは甘口、プラスのものは辛口です。
これと合わせて、味のピントを絞る酸度の値が大きいものがキレやメリハリのある日本酒です。
日本酒度と酸度の組み合わせにより、濃醇辛口 / 濃醇甘口 / 淡麗甘口 / 淡麗辛口の4つの表現ができるようになりましたね。
2. 純米大吟醸 無濾過生原酒
純米酒か、否か。
精米歩合による表記の違い。精米歩合とは、どれだけ米を削ったかをパーセントで表示する数字でした。60%以下が吟醸酒です。
火入れか、生酒か。生酒はフレッシュな味わいと引き換えに、品質が変わりやすい弱点を持っています。
アルコール度数調整のための加水がされているか、否か。
雑味、香り、口当たりがこれでわかりましたね。
3. 生酛造り・山廃造り・速醸造り
手間をかけた昔ながらの自然の力を活用した生酛造りは、深い旨味の力強い日本酒を生みます。
一方、速醸造りは早くできて、シンプルな味の日本酒に適しています。
この3つのポイントを押さえれば、お店で日本酒を選ぶ時に納得のいかない失敗をすることはまずないでしょう。
ただし、日本酒は知れば知るほど知るべきことがまだまだあることに気づくことでしょう。
そんな探究心も含めて、より良い日本酒ライフを!
以上、「みずもと」が美味しい日本酒の見つけ方をお送りしました。
P.S. 最後まで読んでくれてありがとうございます。
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